2021年 8月号 D項

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2022年3月号 C項

Communication: Topic and Outline
フランシス・フクヤマ著 ポピュリズムと「歴史の終わり」について

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>>> 当院論評 Comments By Chiba

前回からコロナにも関連しながら、その先の世界に触れたいと思い、最近、講談社現代新書から出版されている「新しい世界」「世界の賢人16名が語る未来」としてコロナ禍後の世界を予測した生き方を考えたいと思っています。ただし賢人と言えども「当たらぬも八卦」と思ってください。

なお、16名の賢人とは既にお馴染みの方々です。ユヴァル・ノア・ハラリ ②エマニュエル・トッド③ジャレド・ダイアモンド④トマ・ピケティ⑤マイケル・サンデル⑥ナオミ・クライン等々
第3人目は:フランシス・フクシマ氏(歴史の終わり」を主著としています。

これまでこのC項で取り上げてきた講談社・現代新書「新しい世界:世界の賢人16人が語る未来」の中から経済学者「トマ・ピケティ」を取り上げます。タイトルは「ビリオネア(百万長者)をなくす仕組み」としています。この意味は、格差をなくすには、一人に富が偏らない様な仕組みが必要との考えを述べていることです。

 

期しくも、2年前、NYのマンハッタンにデモが起こり、かれらは「1%の富裕者が残り99%の人々を支配するのか」と訴えた。同時期に、ピケティは「資本主義は放っておけば格差が広がる」との警告をその著書の中で訴えていた。

当時、当方は、「渋沢栄一」BOOK3(英語版)を書き上外国人講師にproof readingをお願いしつつあった。そして、近く、Amazon社を通じて、これを世界に出版する予定でいる。渋沢は当時(明治初期)日本に資本主義を取り入れようとしていた彼は、その後、「資本主義をそのまま取り入れたのでは、『弱肉強食』の世界にしてしまう。」と考え、「論語と算盤」と題して著書を出した。この本の趣旨は、単にそろばん(資本主義)を取り入れるのではなく、論語(儒教精神)を取り入れるべきとした。従って、当方も出版に際しては、改めて、このことを紹介する予定である。

 

トマ・ピケティの紹介:1971年フランス・クリーシー生まれ。パリ経学校・経済学教授。

2年前の主な著書:「21世紀の資本」および、最新著書「資本とイデオロギー」が出版され、世界的な話題になっている。いずれも千ページを超す著書である。内容は、いずれも不平等が拡大するメカニズムを解きあかしている。

 

以下はピケティ本人がフランスメディア「ロプス」の取材に答えたのインタビュ―をまとめ紹介する。

資本主義を乗り越えて行くとき

取材者の問どうしてそこまで財産権へのこだわりがあったのですか?

ピケティの答え:19世紀初頭の人々の脳裏には、まだ革命前の王権の恣意放縦がありました。だから、合理的な国家が私有財産を守るということに、有産者達は王権からの解放を実感していたのです。それはこれからオープンな世界ができるという約束でもありました。

そう考えることが完全に間違いだったわけではありません。ちなみに今回の本では、格差を正当化するイデオロギーについて、どれも悪の権化の様には書いていません。どのイデオロギーにも、それなりの真実はあるものです。

ただ、私有財産の神聖化が行き過ぎると問題が始まります。そのせいで過去に莫大な損害が発生しています。今の人は、そのことを少し忘れてしまっているのではないか?

私はそこに不安を感じています。

ソ連崩壊後、我々はパンドラの箱を開けることに怯えはじめ、財産権を再定義しようとしません。「レーガニズム」は、あらゆる形の富の集中を正当化しました。まるで、ビリオネアーこそ、救い主であるかのような言い草です。

私自身は、この高所恐怖症のような恐れは乗り越えられるし、乗り越えねばならないと確信しています。民主主義に則して、財産権について熟議を重ねるのです。複雑ではありますが、やり遂げられるはずです。

支えになるのは歴史の教訓です。20世紀に格差が大幅に縮小された成功事例を思い起こすべきです。 レーガニズムの限界が露呈しています。経済成長は半分となり、格差は倍に

なりました。

そろそろ財産権の神聖化のステージを抜け出すときです。資本主義を乗り越えて行く時がきているのです。

そうは問屋が卸さない?

問:ピキエティさんは、資本主義を乗り越えていけると楽観的です。しかし、世間一般は、「結局、最後に勝つのは資本主義だ。」と考えている節がある。

答え:歴史が示していることがあります。それは、ある格差レジームから別の格差レジームへの移行を予測するのは絶対にできないということです。

スウェーデンがいい例です。スゥーデンの社会制度について、古くはバイキングの時代まで辿れるスゥエーデン人の平等重視の文化があってのことだと言う人がよくいます。

でも、実際に見てみると、この国は長い間、極めて不平等な国だったんです。1911年まで、この国の選挙制度では、最富裕層が一人で100票持っていたりしていました。

この国が変わったのは、人々が力を結集して政治を変えたからです。1910年の時点で、「スェーデンはやがて社会民主主義の国になる」と予言した人がいたとしても、誰もそれをまともに信じなかったはずです。

だから私も現行のシステムが不滅だとは考えません。現行のシステムが危機にさらされることは、今後もあるはずです。その時に、あちこちからアイディアや提言は引っ張り出されて、何かが使えるか検討されるのです。

 

万人向けの社会主義は可能か?

問:2008年の経済危機の時は、システムが破綻寸前まで行き、これからは全てを変えなければならないと言う人が多かったです。しかし、結局、システムは大きく変わりませんでした。何故でしょうか?

答え:2008年は、また、ポスト1990年代のステージを抜けたばかりだったので、次の段階に向けての知的準備が足りなかったんです。

それに当時は植民地主義のおわりに関する別の課題もありました。「ポスト共産主義」と「ポストコロニアリズム」という2つの課題があったので、普遍主義的な社会主義思想がなかなか出てこない状況でした。す^しかし、それも変え宛て来ています。米国では、バー二ー・サンダース、エリザベス・ウォレン、それから民主党の若い党員達が富の再分配を掲げるようになっています。
以上

来月に続きます。

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