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フランシス・フクヤマ著 ポピュリズムと「歴史の終わり」について

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>>> 当院論評 Comments By Chiba

前回からコロナにも関連しながら、その先の世界に触れたいと思い、最近、講談社現代新書から出版されている「新しい世界」「世界の賢人16名が語る未来」としてコロナ禍後の世界を予測した生き方を考えたいと思っています。ただし賢人と言えども「当たらぬも八卦」と思ってください。

なお、16名の賢人とは既にお馴染みの方々です。ユヴァル・ノア・ハラリ ②エマニュエル・トッド③ジャレド・ダイアモンド④トマ・ピケティ⑤マイケル・サンデル⑥ナオミ・クライン等々
第3人目は:フランシス・フクシマ氏(歴史の終わり」を主著としています。

フランシス・フクヤマ著 ポピュリズムと「歴史の終わり」について

――今回のパンデミックが明らかにするのは強力な国家への欲求(指導力)です。

問1:――中国の政治体制は民主主義に変わるモデルになりますか?

―― その対策に疑念が残るとしても、中国がリベラルな民主主義に代わる真のモデルとして再び認められることはないでしょうか?

答え:最も成功しているのは非民主主義的なモデルです。つまり、計画経済と資本主義のようなものの混合体です。

民主主義として語ることはできないにしても、中国は少なくとも市民に提供される援助――市民の幸福とは言わずともーーに責任を負う、一つの国家です。

中国と言う国家の長い歴史を忘れないようにしましょう。その伝統は、日本や韓国などの隣国に、様々な度合いで残っています。

しかしながら、それはコピーされ、例えば、強権国家の伝統がない南アメリカなどのアジア外の国へと輸出されるべきモデルではありません。

中国のような独裁的な体制は、緊急事態への対応に上手く備えることができます。しかし、韓国などのような国は、それほど強制的な手段に訴える必要もなく、同様に良い結果を得る事ができました。それ故、このことが中国の体制の優位性を証明する訳ではありません。

問2.コロナがもたらす脱グローバル化の未来とは?

私達は突然の脱グローバル化を体験しています。それについてどの様な未来を予想しますか?

フクヤマの答:パンデミック以前にグローバリゼーションは限界に達しており、人々はそれにブレーキをかけることを考えていました。パンデミックはこの考えを加速させるでしょう。

多くの企業が合理化のために世界各地に分散した供給網を見直すことになるにしても、経済界全体がその事業を自国に引き上げ、自給自足へと回帰すると考えるのは馬鹿げたことです。

世界が50年前の発展レベルに後退するとは考えられません。脱グローバル化が起こる可能性が高いとしても、それは程度の問題にすぎないでしょう。

問3:ジョセフ.ステグリッツは最近「新自由主義の終わりと歴史の再生」と言うタイトルの論文をアメリカで発表しました。あなたも新自由主義システムの凋落を認めますか?

答え:この論文でステグリッツは、私の著作「歴史の終わり」を常に論拠として私を新自由主義者の一人とみなし、攻撃してきました。

しかし、私があるシステムーーこの場合は国家を主要な敵として名指ししてきた自由主義のシステムですがーーの優位性を述べたからと言って、そのシステムと共通の価値観を持っていたと言うことになりません。

反対に、今日、私達は新自由主義の副産物を目にしているのであり、それは既に死に絶え、私達は1950年代や1960年代にあったような自由主義に回帰しようとしているのだと思います。

そこでは、市場経済と私有財産の尊重が強力な国家と共存し、国家は社会経済的な不平等を解消すべく介入していました。繰り返しますが、今回のパンデミックが明らかにするのは強力な国家への欲求です。

問4:あなたの著書のタイトルである「歴史のおわり」の反対は、新たな歴史のか誕生でしょうか?

答え:慎重であるべきです。より強権的な体制の誘惑に負けて、自由主義モデルを刺草(いらくさ)の中に投げ捨てはしないでしょうが、ともかく、自由主義、社会保障そして国家介入のバランスの修正は必要です。

ポピュリズムの台頭は「歴史の終わり」の証拠

問5:あなたは著書のタイトルの含まれている「最後の人間」はニーチェを、そして

「力への意思」を持ちえないニヒリズムの人間を参照しています。そのような人間は倦怠と安全な幸福に埋没します。私たちはそのような世界に生きているのでしょうか?

答え:そのことは特に、ポピュリストの体制ないし、ポピュリストの誘惑が現れている欧米の社会に当てはまります。ポピュリストは民衆に対し現状維持を約束します。彼らの重要な関心事や、地位と承認を得るための闘争について、ほとんど心配させないようにします。私に言わせれば、こうしたポピュリズムは、私たちが「歴史の終わり」を生きていることの補足的な証明なのです。と言うのも、ポピュリズムは、ナショナリズムやファシズムと言った過去に存在した思想を、控えめな形でリサイクルしているからです。しかし、こうしたリサイクルは社会民主主義も行っていることですが・・・・。

問6:フランスではマスクは不足しています。アメリカ合衆国ではどうでしょうか?

回答:同じ心配がありますが、もっと酷いと思われます。マスクや人工呼吸器の不足は1月から言われてきましたが、それ等の生産を酢すねるための、いかなる決定もありませんでした。国家が生き残るためには、専門家、公益に身を捧げる公正な人間、彼らに耳を傾ける最終的に決定を下す指導者が必要だということが、これで証明されました。私達の大統領はと言えば、この2ケ月間、パンデミックは私達とは無関係だと言い続けてきたのです。

コロナから得られる教訓とは。

問7:現在の出来事から、いかなる教訓が引き出せますか?

答え:政治的な教訓です。アメリカ人として、私はドナルド・トランプのような大統領は信用できないと言うことを主張します。2016年の当選以前から、このナルシスで、無知なペテン師は、事実や自明の理を無視しており、私達はすでに大きな不安を「持っていましたが、経験しているこの危機こそが、この類の指導者にとっての真の試金石なのです。

所が、彼は、私達この危機を乗り越えるために必要な集団の統合も信頼も作り出すことができませんでした。それにも関わらず彼が11月に再選されるとしたら、アメリカ人は大きな本当に大きな問題を抱えることになります。

ですが、もし誰かが別の者が選ばれるとしたら、私達は重要な教訓を覚えていたという事になるでしょう。

以上

追記:上記のフクシマ氏の意見に対し千葉の意見と感想を以下にのべます。

回答7に対して:*7に対する意見と感想:トランプ元大大統領に対するものはフクシマ氏が持つものと同意見です。

理由は①コロナに対するトランプの感覚は科学性を持たず、恐れを知らない人間であること。彼のコロナ対応を見ていると、国として対応を誤るであろう。

②また、気象変動に対する対応の科学性がなく、石油産業を守ることしか考えていないこと。

これは今年COP26で示された結論「今後CO2排出量は「各国30年までに大気温度上昇を1.5度・摂氏に抑えること。」としたが、大統領がトランプであったら、この値にはならなかったであろう。

この様に、世界規模の問題に対し、経済的メリットを優先して行く議論の進め方は世界のリーダーとして失格と言える。

現に、12月初旬のアメリカの中西部で起こった竜巻の被害(通常、これまでは、この種の竜巻は秋に発生し、冬場には発生しない。

如何に海水温度と大気温度が上昇しているかが示されている。今年の大気温度上昇は1.35度・摂氏と記録されている。後々、これに(1.5度)抑えても、今回の竜巻以上に災害が発生す可能性がある。

アメリカの分断について:2020年の大統領選挙結果について:

この時の大統領選挙では辛うじてBidenが勝利した。しかし、敗者のトランプはあきらめず、しばし、沈黙していた。約7000万票の支持票を獲得していたからであろう。このような状況では、次の選挙では、再度挑んでくるであろう。また、民主主義制度では負けは負けとして、処理しなければ、国として成り立たない。でなければ、南北戦争の様に、分断して国を2つの国としして分けざるを得ない。アルゴアの大統領選挙時も僅差でかれは負けたが、引き下がった。次の中間選挙・2024年はどの様になるか?また、その時、Bidenが勝てば問題ないが、負けるとなると米国を揺るがすこの事になろう。民主主義国は多数派が」権力を持つことになるが、少数派を無視はできない。Bidenは理解するもTrumpは自分本位に政治を動かすであろう。
以上

来月に続きます。

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