2021年9月号 D項

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2021年9月号 D項

Debate: Topic and Outline
毎月行われているYYクラブのディスカッションの概要(英訳と日本語訳あり)

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>>> 当院論評 Comments By Chiba

China is “a desirable enemy” for the U.S.
Jonan Ganesh: Chief Commentator of U.S. Political

先月本誌で紹介した日経記事はイアン・」ブレア氏の意見(中道派)でしたが、今回は強硬派の意見といえる。と言ってもペンタゴンからの意見でもあります。(予算獲得を狙った意見であるとも言われています。)ここで、先月に続いて、対中国対応につき、コメンテーターのジャナン・カネッシュの論文「米、中国は望ましい敵」と題する強硬派発言を紹介します。いかし、一説にはペンタゴン」が予算獲得の為のアドバルーンとも言われています。問題は日本政府が中国との関係をどの様に描くかが我々にとって心配です。

この項は先月メルマガD項に記載した英文のレポートがかなり長文であったため、今月号に和文を掲載しています。

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(ご参照:)この項は先月メルマガD項に記載した英文のレポートの日本語版です。

 

米ワシントンでも最も抜け目なくロビー活動を展開しているのはペンタゴン(国防総省)であろう。なので、米軍が机上演習で中国に幾度も大敗したとする報道は、話を少しかどころか、大いに盛っていると見るべきだ。戦争での赤裸々な敗北を示す数々のシミュレーションはいずれも予算の増額が必要だと訴えているのだ。

ただ、こうした補足説明を「念頭に置いてたとしても、懸念すべき点は少なくない。太平洋を舞台に戦争が勃発した場合、米軍が勝利を収めても、米国人の犠牲者数は過去20年間にアフガ二スタンで失われた2350人より多くなる恐れがある。

中国と戦うとなれば、予想される被害の規模だけでも、アフガン戦争より大きな試練になるが、違いはそれだけではない。

国際テロ組織アルカイダも反政府武装組織タリバンも、米国に挑む世界大国ではなかった。」それぞれの組織の統治の「手法が、成長と秩序につながるモデルとして第三国を魅了することは一切なかった。米国は世界戦略の焦点を「中近東」地域から中国へとシフトすることで、卑劣だが、封じ込める可能な敵から、歴史的に:壮大な敵の意向かうこととなる。

それでもやはり、この変化を喜ぶことは間違っていない。アフガンからの米軍撤退をめぐり、共和党がバイデン大統領に浴びせる批判にはどこか形式的なところがある。

米国は現在、実り少なく、すごすごと幕を引こうとしているテロとの戦いの時代から、自らの強大な軍事力と精神的なよりどころをこれまで以上に必要とする敵と敵対する時代に入っっている。米国は大国が絡む武力外交ではこの上なく強いが、局所で起こる反応反乱や内乱への対応は拙く、しくじりが多い。

共和国として誕生後間もないころに大英帝国のっ脅威をかわし、南北戦争から欧州を遠ざけた。その後、帝国主義の日本とナチスドイツを倒して、両国を平和主義の民主主義国家へと導き、緻密かつ膨大な計画と辛抱強さをもってソ連に冷戦を仕掛けた。一方、東南アジアであれ、中東、あるいは「アフリカの角」とと呼ばれる地域であれ、米国は主に、主権国家以外の敵との非正規戦では失敗を続けてきた。その理由の一端は本質的に反乱・内乱への対応は難しいことにある。また、超大国としての米国お特異な歴史ももう一つの要因だ。

キューバやフィリピンなどを例外として米国は正式に植民地を持ったことがない。そのため、、米国の政界と軍部のエリート、さらにはジャ―ナリズムのエリートさえもが紛争を、国家間で起きるものだと見る傾向がある。(イラク占領の大失態をイランによる干渉のせいにする声はここから生じている。)

このため、敵が国家でないテロとの戦いの時代が米国にとって厄介になるのは必然だった。中国という超大国と争うことは慣れ親しんだ世界への魅惑的な回帰になるかもしれない。

中国との対決について米国政府がやる気満々なのは、強力な競争相手であると、冷静に認識したから、というだけではない。支配階級が自らの本分を再発見した安堵の表れでもある。対テロから対中国への傾倒は構想にとどまらず、軍事力そのものにも及ぶ。ペンタゴンは丸一世代にわたり、アフガン規模の二つの地域紛争を同時に戦うための計画を立ててきた。

しかし、この計画は2018年に変更され、自国の存在意義をかけた一つの戦争を戦えるようにする方針を掲げるようになった。

新たな軍事態勢はテロとの戦いの頃よりうまくいくはずだ。テロとの戦いで米国は歴史上最も強大な軍隊を、対テロ戦に向けてより細かく対応できる様に強引に「変革し、そのために莫大な予算と人材をつぎ込んできた。

テロとの戦いでの米軍の一連の対応策が誤っていたと一笑に付すのは適切ではない。この時の改革がなければアフガン戦争の結果はよりひどいものになっていたかも知れないからだ。

それでも、米軍が20年間近くにわたりアフガンにとどまった末の現実が、勢力を増しているタリバンだ。バイデン氏自身が古くは09年にアフガン戦争に絶望し、、オバマ大統領(「当時」の米軍増派に反対していた。

米国はアフガン占領では、目標が曖昧で敵がコロコロ変わる闇世界で統治することを余儀なくされた。実際、敵の一部は明確に倒すより自陣に取り込む方が容易だった。そう考えると、大国との対峙は米国に一種の解放感をもたらすであろう。

米国が中国との軍事力で対決だけなのであれば、それは米軍上層部への朗報にしかならない。米国にとって、中国との対決がテロとの戦いより望ましいのは、結束を欠いた国がまとまる可能性があるからだ。

過去を振り返ると、米国は他国との対決が国家として結束するきっかけとなってきた。

第二次世界大戦に参戦したことで、党派対立が絶えなかった戦間期から一転、国として団結した。粛清が続いた旧・ソ連も第二次世界大戦が国としてまとまる契機となった。

そして、ソ連が崩壊すると、ワシントンにわずかばかり残っていた超党派精神も崩壊した(米最高裁判事に指名され候補者を上院が全会一致で承認したのは、冷戦終結直前の1988年が最後だ。)テロとの戦いは、冷戦の様に国をまとめることはできなかったのだ。

米国のアフガン戦争を振り返って際立つのは、真珠湾攻撃と並ぶ死者数ではない。

米国史上最長となった戦争期間でもない。朝鮮戦争は法的には終結しておらず、休戦中で、米国はいまだ数万人の駐留部隊を置いて朝鮮半島を守っている。

220年間続いたアフガン戦争の最大の特徴は、米同時多発テロ後に米国の結束が崩壊したことだ。テロによる凶悪な暴力が度々起きているにも関わらず、過去の時代にあったような一体感をもたらすことはできないかった。

自国の4倍の人口を抱える従来型の超大国ならば、ひょっとしたら、それを実現できるかもしれない。米国はしばしば「他者」を通じ自国のアイデンティティを見つけてきた。そのような国がアフガンでそれを見つけらるはずはなかったのだ。

以上

出典:英フィナンシャルタイムズのコラム(‘21630日付け)

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